2007年08月10日

文章と論理性

文章読本 (中公文庫)文章読本 (中公文庫)
丸谷 才一

中央公論社 1995-11
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著者は先達の谷崎潤一郎に対して意地が悪い。谷崎が『文章読本』で「用語について」に述べた下りを引用して、「昔から使ひ馴れた古語を選ぶこと」にいちゃもんを付ける。古語の正統的な定義、専門家の間ではたぶん中世以前のものを指すのだろうか、を振りかざして、谷崎の指すのは江戸後期以降の町人文化の言葉を指すと指摘する。
谷崎の『文章読本』を普通に読めば、明治期以降に入った新規な語彙以外を「古語」と指していることは誰でも分かるのに、なぜかこの文豪の言葉の趣味を、丸谷はねちっこく谷崎のマザーコンプレックスに結びつけようと努力しているように思える。


とは言うものの、この本の功績は文章と論理の関連を明確に指摘したということで、実際に金字塔であり、後世に読み継がれるべき本と思う。本文ではかなり論理性に乏しいところが散見されるにしても。


(以前、Amazonに投稿したものをちょっぴり直しました。)

Posted by phonon at 2007年08月10日 20:53
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