2008年07月18日

媒体組成研究 第2課題


--- 図版制作の所見---


第1課題で用語として「アウラ」を取り上げたので、この第2課題では「美の礼拝」と「触覚的受容」の二つの概念を選択し図版を制作した。


1. 「美の礼拝」の図版制作

本文献の冒頭で、プロレタリア革命後、生産の諸条件のもとにおける芸術の発展の傾向に関する諸テーゼが、どのような闘争的価値を持つのかについて暗示した後、ベンヤミンは続く節で複製技術とはどのようなものかについて説明し、また芸術作品の真正性とそれに伴う伝統の重みと権威をアウラという概念として提示し、さらに複製の普及によるアウラの凋落が、大衆運動と知覚の変化によることを指摘する。「美の礼拝」という言葉はその直後のV節に初めてあらわれる。古代の像が礼拝の対象であったこと、それを担保するものはアウラであって、芸術作品の価値は儀式に基礎を置いていると述べる。それがルネサンス期以降、世俗的な美の礼拝に取って変わり、それが300年続いた後、複製技術の到来をもって芸術作品は儀式の寄生から解放されたと認識する。


とはいえ、現代においても世俗的な美の礼拝は続いているし、この節でベンヤミンが指摘するように、写真という複製技術の出現に対して「芸術は、芸術のための芸術という教義を編み出すことで反応した」。
世俗的な美の礼拝は魔術的な儀式でもなければ宗教的な儀式でさえもないが、そこには一種荘厳な雰囲気が付き纏う。美術品が権威を持ち、その複製がより多くより広く普及すればするほど、その巡礼は荘厳さを増し鑑賞する態度はより厳粛となる。その美術品が誰でも知っているようなものであれば、それが収蔵されている土地に立ち寄りながら、見に行こうとしない態度は時として犯罪的ですらあるとみなされる。私の友人や親戚はそのような強迫観念にとらわれる人が多いようで、神奈川の私の自宅に立ち寄った時はあわせて鎌倉に案内することを強要する。「美の礼拝」の図版の1枚は友人を鎌倉に案内した時のもの、大仏前でのお約束の記念写真。私はこの後の人生において、何度鎌倉の大仏へ美の礼拝をしに行かなければならないのか。


図版のもう1枚は法隆寺中門前、5月に撮影。最近は秋と並んで初夏も修学旅行の季節となっていて、ひっきりなしに小学生から高校生の団体がやっていくる。彼らは自分たちの価値観とは全く何の関わりもなく、あくまでの大人の価値観から美の礼拝を強要される。とはいえ、最近の修学旅行生は鑑賞態度が良いようで、先生に熱心に質問する生徒が何人も見受けられる。僕の世代は(僕と僕の仲間だけかもしれないが)、美術館に入ったら出口に向かって駈けて行ったけれども。大人による日本美術の美しさの刷り込みは確実に成功しているようだ。


2. 「触覚的受容」の図版制作

XVII節でベンヤミンはダダイズムにふれて、ダダイストたちは「芸術作品を商業的に換金可能にすることによりも、それを静観的な沈潜の対象としての売りものになりえなくすることに、ずっと重きを置いた。」と書く。そのために素材の価値を貶め、作品には屑言語を含め、ボタンやら乗車券やらを貼り付け、アウラを消滅させた。ダダイストにとって制作は気散じであり、また作品は大衆の怒りを買うものでなければならなかったと、ベンヤミンは書く。
ダダイズムにおいて芸術作品は道徳の範囲を外れることによって「一発の弾丸」となりひとを撃ち、触覚的な質を獲得したとベンヤミンは主張する。


次の節では、芸術作品への関与のあり方について述べられる。芸術愛好家は作品を崇拝し、大衆は娯楽をもとめる。精神を集中するのか、くつろぎをもとめるのか。ベンヤミンはここで建築を例に挙げる。「建築は古来、その受容がくつろいでなされる、しかも集団によってなされる芸術作品の、典型だった」「建築物は二重のしかたで、使用することと鑑賞することによって、受容される。あるいは、触覚的ならびに視覚的にといったほうがよいだろうか」。
この後、触覚的受容と知覚に課された諸課題の解決可能性の関連について論が及ぶが、ここでベンヤミンが指摘する意味での象徴的でかつ身近な建築物は何であろうかと考えた。


私見では、伝統的な日本庭園ではないかと考える。目で見て、歩いて、佇んで、あるいは建物の中でひっそりと息をして庭という芸術作品を受容する。図版は、京都詩仙堂での一枚。畳の上を他の観光客と詰め合って庭をじっと見ている。庭と対峙する人も入れば、くつろいでいる人もいるだろうし、自分というものがなくなってただただひっそりと息をしているだけの人もいるであろうと思われる。


(図版は省略)


otoryoshi@gmail.com

Posted by phonon at 2008年07月18日 06:05
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