眠れぬ夜に寄せて

FOR STUDENT


また
光の色が変わって、
やけに優しく眩しく清らかな肌触りの朝。
から、始まったこの一日を、
さながらただの美しいだけのものとして祝福するように
あるいは何か特別なものとして定義するために
もしくはただの 僕の娯楽として

こういう書き方を選ぼうと思う。


「あなたがいたから変われた」
とか
「あなたがいるから生きれる」
とか
暗に「あなたは特別だ」と囁きかけるような
そういう芝居がかってやけに神妙な きらきらしてる言葉をもらったことがある。
いくつか。ときに。
思いかえせば。
もしくは、今この瞬間も。

そういう もろくて恥ずかしくて嘘っぽくてまっすぐな
言葉の数々に救われるのはむしろ僕の方で
忘れられないのもきっと僕だけなのだけど
繰り返し考える。


痛みについて。
悲しみについて。
優しさについて。
救いについて。


助けてほしい と言われたこともあるし
助けられた と言われることもある

思うことすらある。

そういう事実に、時に打ちのめされる。

僕が僕に耐えられなくなるときがあるように
あなたもあなたに耐えられなくなるのかもしれない
そういうとき 僕の言葉とか目とか声とか腕が、何かきっかけに成るなら
こうやって文章を打つことも
あてどなく話し続けることも
滑り落ちた暴言を言われるがまま忘れ去る事も

少しも苦じゃない。

ただひとつわかってしまったことがある。
誤解を恐れずに書いてしまうのであれば、
誰もあなたを救えはしない。

僕があなたに渡したという言葉ひとつ
そんなものはカボチャの馬車みたいなもので、
帰り道まで保証するには値しない、未熟な魔法のようなものなんだ。

聞き届けるのはあなたの耳だ。
立ち上がるのはあなたの脚だ。

座り込んだままでは、誰もあなたを見つけられない。
なんかそういう 優しいようでいて冷たい とらえどころのない真っ黒な部屋に、
僕たちは放り込まれている。

そのことを予期せぬうちに僕たちは識っている

何もしないうちから僕たちに差し出される手などない。
立ち上がらないうちから見えてくる曙光もない。
救われるために、また闘わないといけない。

僕は僕だけの言葉で
あなたはあなただけの言葉で
いつまで苦しいとか楽しいとか愛してるとか大嫌いだとか
そんなことを言ってられるだろう
いつしかそれは失われてしまうかもしれない。

なんだかこんなことを書き付けるということ自体が、願いに似ていてもどかしい。


オトギ

投稿者:fantasy : 2011年11月17日 21:02

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