金の糸

FOR WORLD


西日が照らした電線は、金色に光って見えた。

水で薄めた水彩絵の具で描いたような空に、
ベエジュ色の町並みが浮かんでいる。
気づいたら玄関の前で足を止めて風景を見ていた。
木の葉の渇いた音や、帰宅途中の子どもの声
見計らったように黄色い電車が通った。
ゴトゴト ゴトゴト 地鳴りのような音がする
僕は電車が好きだ
規則的すぎない線路のぶつかる音が好いと思う

からだに やっと空気が通った心地がした。
ここ数日体調を崩していて、機嫌が悪いのはそのせいだと思っていたけど
そうじゃなかったらしい。

美しいものは薬になるんだ

と思い知った一瞬だった
誰かのかけてくれる心配の言葉も おいしいご飯も
とてもあたたかいけれど
理屈抜きに降り掛かる美しい何かに、僕はいつも救われる。

ここ数日、口にすることに確かな手応えを感じられなかったけれど
これでやっと示しがついた。
僕は美しいものが好きなのだ。
だからこの手でつくりたいのだ。
そこに一粒の嘘もない。
誰かにとって綺麗事でしかなくてもいい
僕にとって確かな目標であれば、それでいい。
いつだって そうだ。

不格好な電線に金の光を当てるように
当たり前のようにいつのまにか、あなたと僕の世界が
ほんの少しでも美しくなっていくように
そんな風に毎日を大切にできたらいい。


オトギ

投稿者:fantasy : 2011年09月28日 17:47

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