雨だれ

FOR WORLD

 どうやら梅雨がやってきたらしい。
 雨が降っている。

 
 小学生のころ、雨の日というのはどこか不気味でロマンティックだった。
なんでもない、ありふれてかさついた校舎に、闇ができる。
蛍光灯だけでは照らしきれない廊下の隅や、どこか湿った空気に、
なんだか居心地の悪いような良いような、不思議な感覚がしたものだ。
 算数の授業や先生のお話が、何から何までいつものように正しい顔をしない。
それはなんだか、何が楽しいのかわからないことを、
わからないままでいていいと許してもらえたようで、
どこか安心した。

 小学生。
穏やかで夢ばかり見ていた日々。
思い出す人々は誰もかれも優しいのに朧げだ。

 雨音がしている。

とても静かだ。


オトギ

投稿者:fantasy : 2011年05月28日 23:22

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