卒業制作を作っているあなたに1

学内も卒制展直前の空気になってきました。
この時期の空気が私は一番好きです。


私達の頃、屋外展示は彫刻・工デ・空デ・建築のいわゆる立体系学科に許された特権で、平面デザイン系は室内展示と相場が決まってました。平面デザイン系の卒展はプレゼンパネルとせいぜい模型。というのも、彫刻・工デ・空デ・建築ぐらいしか工作用機材のそろった工房がないので(基礎デは木工工房があったっけ)、それ以外の学科は工具的にもスペース的にも屋外に置けるような大きなものを作れなかったんです。なので、場所の調整もそんなに困ることがなくて、彫刻学科内で調整すれば好きな場所に置けてた平和な時代でした(笑)

いつからかな?今やどの学科でも大型作品・屋外展示を作っていますね。4年間の集大成ですから、「部屋に入らないような大きな作品を作ってみたい」という気持ちもわかります。

安全第1、特に火事を起こさなければそれでOKだけど(苦笑)、大型作品・屋外作品の注意すべき点を書いてみます。


「卒業制作を作っているあなたにパート1」です。



風雨の問題
卒展の時期は雨はもちろん、雪だって降ります。防水処理は絶対。電気を使う人は漏電ブレーカーを忘れずに。
そして、忘れちゃいけないのは風対策。雨よりもやっかいです。中央広場や12号館前、9号館前の風はほんとにバカにしちゃいけません。私の同期が中央広場にトタンで作ったような作品を設置したら、風で1日もちませんでした。ブーフーウーの家状態でトタンが飛んでく姿は今でも忘れられません(笑)


●人の問題
彫刻学科の場合は自分一人で動かせる作品がほとんどないので、制作や搬入出ではギブアンドテイクが発生します。「君のも手伝うから、僕のも手伝ってね」という暗黙の。これは卒展だけでなく、普段からこういう関係で制作してるので当然な世界なんです。(工デのクラフト系も同じような感じかな?)
彫刻学科の学生が意外と時間に厳しいのは、相手のため、というよりも自分のためでもあるんですね。

デザイン系の場合はどうでしょう。屋外作品・大型作品は恐らく一人で作ることは難しい。でも、普段は暇に見える周りの友達も、卒展前はみんな同じようにせっぱつまってます。あまり同級生の人手はあてにしないことですね。サークルをやってれば後輩部員に手伝ってもらうこともできますが、「人の確保をどうするか」という問題は早めにクリアにしておきましょう。
そして「手伝ってあげるよ」と言ってる友達は多分時間通りには来ないので、そのことも計算に入れましょう(笑)


●スペースの問題
さすがにこの時期に「制作スペースをどうしよう」と悩んでる人はいないと思うので、こんな笑い話を。

卒制ではないのですが、私の後輩がFRP工房ででっかい恐竜みたいなのを作っていました。天井に届くくらいの大きさです。完成し、いざ搬出って時に・・・ドアから出なかったんです(笑)
窓からも出ないから、結局グラインダーでしっぽ部分と足をカットして、なんとか搬出しました。今はまだ「制作」のことしか頭にないと思いますが、そろそろ「搬出」のことも考え出した方がいいですよ。ちゃんと運べるようになってますか?搬出ルートは確認しましたか?


●時間の問題
もう一度卒制スケジュールを確認しましょう。
展示は1月末ですが、デザイン系の場合は提出(講評)が早く設定されていることが多いようです。また、展示会場の準備(パネルを運んだり)は全員でやることになりますが、その日は半日以上自分の仕事はできなくなります。屋外展示だからって、やらなくてもいいってことは多分ないはず。自分に関係しない予定も考慮してスケジューリングしましょう。
プレゼンパネルを提出する人は印刷する時間もそろそろ考えてスケジューリングしないと「プリントはギリギリでいいや」なんて思ってるとかなり痛い目にあいます。プリンターの調子が悪くなったとかインク切れとか紙切れとか印刷所が混んでるとか、いろんな要素が直前に出てくるもんです。


●素材の問題
最近の流行は粗大ゴミを使ったアートかもしれません。今年は特に大竹伸朗展があったので、影響を受けてそういう作品が増えるか、もしくは誰もやらないかのどっちかだと思っていますが(笑)

以下は個人的な感想です。

その辺に転がってる素材を使っているとかなり萎えます。
「へー、それをそう使うかー」「どこでそんなもん、見つけてきたんだろ?」みたいな大竹さんのような面白さがあればいいんだけど、「あなた、ムサビの粗大ゴミ置き場から拾ってきただけでしょ?」なアート。
例えば、自転車の車輪とかテレビモニタとか発泡スチロールとか石膏像とかをくくりつけただけの作品。それがボリューム的に「よく作ったなあ」と思えるものならいいけど、「いかにも一人で運んだ量。リヤカー一杯分」というのが丸見えの作品だと目も当てられません。
4年生の、しかも卒制でそういうレベルの作品を作るひとはムサビにはいないので大丈夫。でも、まだ視野の狭いファイン系1,2年生ならありえるかな?
「そういう素材を使うな」という意味ではありません。「素材を昇華させようよ」ってことです。


●外装の問題
デザイン系が屋外展示をするようになって増えてきたのは、「中に入って穴から外界を見る」みたいなタイプの作品です。「部屋モノ」と呼んだりもしてますね。
このタイプの作品で一番陥りやすいのは、中のことばかり考えて外装の処理を何もやらないパターン。「外側はおもいっきりベニアが丸見えで黒く塗っただけ」なんて作品、よく見かけます。黒い壁だと寂しいから文字も書いたりね。タカアンドトシなら「ゲイサイの模擬店かっ!」とツッコミが入ることでしょう。
でも、自分が見る側の立場を考えてみてください。見た目の悪い作品の中に入ろうと思いますか?中に入って見てもらいたい作品を作るのなら、中身を作る以上に外装制作に力とお金をかけるべきです。


屋外作品って目立つんですよ。その外観がしょぼいと学内中の作品、特にそのそばの建物の作品もしょぼく見えちゃうんですね。これほんとに。
屋外作品を作る方は責任重大なんだよ。

え?今更言うなって?
今更ってことだと去年もこんなアドバイスをあんな時期に書いてますね。そういう性格なんです・・・。

投稿者:ichiro : 2007年01月18日 04:10

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