いつか見た、どこかの景色

FOR MUSABI


陽の沈むまで離れの家で絵を描く生活は、正しく生きていると思えてホッとする。
1日中マウスの音を聞いたり、画面をのぞきこんだりするのも、悪くないけど。
雨の匂いをふくんだ風にあおられて、ただ釘を真っ直ぐに打ち込むことや、
木材にたっぷり絵の具を塗りこんで、その渇くのをぼうっと見ていると、
すべての物事の根っこを指先でゆっくり撫でているような安心感につつまれる。

見た事も聞いた事もない郷里に立ち返るような一瞬だ。
その一瞬のために、何時間も何時間も息をとめたり吸い込んだりして過ごしてしまう。

いつか、美術をやっている人はみんなその場所を知っているんだと思っていた。


オトギ

投稿者:fantasy : 2013年03月18日 22:22

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