うつくしい朝を知っている

FOR STUDENT


寒い朝の空気が好きだったな と思う。

この時期は気まぐれに、学校の門があくよりも早く
高校にいた。
職員玄関というのは、大体7時に開くんだけど
ときどきそれよりも早く着いてしまって
面白みも何も無い学校の中庭を眺めながら、
だらしなく あくびして登校してた毎日って、恵まれてたのかもなー
なんて考えてた。
中学校まではよく遅刻してたから。
そんなことを考える頭の半分で、
こんなに贅沢な朝を誰にも教えず内緒にしたいと思っていた。

あの頃の、
この時期。
車の中、頬にふれる朝焼けの仄かな熱や
肩で風を切って歩くときの清々しさが
張りつめた緊張感と見事に調和した、美しい朝。
僕だけが知っている、あの頃の焦りだとか幸福さは、
今も僕の目に僕の耳に僕の肌に
思い出すようにささやきかける。

誰もいない暗い美術室で鉛筆を削るかすかな物音
何もかも死んでしまったような静かな静かな一日の始まり


忙しさにかまけて 日々をおろそかにするのは悲しい事だけれど
何かに追いつめられる時期というのは、僕は必要だと思う。


オトギ

投稿者:fantasy : 2011年10月11日 22:30

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