秋のアトリエにて

アトリエに入ると 即席に作られた台の上に
なにやら 秋らしい色をした2種類の植物の実がコロコロと置かれていて
一部はナベに入れられて クタクタと火にかけられている

こういう様子を見ると
日本画だのオーーーっ と心の奥で叫んで
ずずっとお茶をすすりつつ カッコーン! という獅子脅しの音を聞きたくなる

金工であったときは  原液には絶対に触れてはならん!!というような
ナントカカントカ劇物なるものを使用していたもんだから
日本画にもどってきて やれ このような 攻撃性のない
まったくもって平和そのものである材料をみると 非常に心が落ち着く


木の実のようなものは ジブジブと煮詰められるうちに なんともまー
いいかんじの茶褐色をはきだしていく

このちょっとチクチクとした実は 夜叉五倍子 と書いて
“ヤシャブシ” というものだそうだ

そしてもう一方の豆の皮のようなやつは 皀莢 というムチカシー字を書いて
“サイカチ”と読むのだそうだ

サイカチイーッ


「サイカチの木は 見つけるとつい 拾って帰りたくなるんですよね
このへんですと 恋ヶ窪の図書館を曲がったあたりに サイカチの木があったかしら」

三浦先生は説明しながら サイカチの色のでぐあいを確かめる


今時 「○○の○○に○○の木がある」 なんて言葉が新鮮であった

そんな素朴な感性が息づいているところが日本画のいいところである

また サイカチは井の頭公園にもあるということで 
そうか、 そこにいけば手に入るのか こんど見てみよう ときゅっきゅぽんが
思ったときに 日本画学科のタッキーこと 滝沢先生がやってきた

そして ニコニコしながら


「ムサビにあるよ サイカチの木」

と 言い放ったのである


皆 やや サイカチとは見つけにくいものだと思っていたため
この発言にどよめいた 

「うん ムサビにあるよ  2本  私が植えといた☆」(ニコニコ)

ええええっ!?

「もうかなり大きくなったねえ・・ フフフ」


と笑う 滝沢先生は やはり 日本画の仙人以外のなにものでもなかった・・・
と ひそかにささやかれつつあるのであった

投稿者:kkp : 2010年10月08日 01:41

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コメント: 秋のアトリエにて

タッキーこと
滝沢具幸教授のご生誕の地は
まさしく仙人が棲むような赤石山脈(正確には伊那山地ですが・・)の麓にございます。

夜になると星空がきれいなのはもちろん、眼下に広がる天竜川沿いに街灯や民家の明かりが地上の星のように見える場所です。

私も滝沢先生と同じ市の生まれでありながら、サイカチの木とは初めて聞いた名前です。その実を煮出してどうされるのでしょう?

投稿者 koh : 2010年10月08日 12:32

きゅっきゅさま、こんばんは。

さいかちって、洗剤のかわりになると昔、母に聞きました。

でも、どんな木なのか、実なのか見たことがありません。

投稿者 yukihaha : 2010年10月08日 20:21

>kohさん

まあ そうだったんですか!
調べてみますと 本当にまあ美しいところのようですね!
滝沢先生はそこからムサビへと おりてきてくださった方だったんですね

サイカチは煮詰めると 茶褐色の染汁が出来まして、
それを 胡粉と墨をといたものに加えると 古びた風合いの
色が出来あがります
今 古典技法をやっているので そのようにして 長い年月の
色合いを表現するようです

>yukihahaさん

あ!! そうです
三浦先生が そのようなことをおっしゃっていました
サイカチの汁で顔を洗うと美しくなるとかならないとか・・・
洗剤にもなるんですね!

サイカチは マメなのでしょうか
マメのサヤを乾燥させたもののようでした

投稿者 きゅっきゅぽん : 2010年10月10日 00:41

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