『第二回 しんゆり薪能』@麻生市民館ホール

本日の東京・神奈川付近は、あいにくの雨。夕方ごろには止んでいたのですが、念のため電話して確認したところ、会場は麻生市民館ホールに変更になったとのことでした。
薪能初体験は、少なくとも10月までおあずけです。ちょっとがっかり。


今日の演目は、狂言が『膏薬煉』、能が『船弁慶』
本編に入る前に、簡単な演目解説がありました。(といっても、『船弁慶』中心でしたが)
麻生区の区長さんもいらして、装束を舞台上で着付けてもらっていました。しかも、女の役が着るもの。笑
能の着付けは中世のもので、帯ではなくひもだけで着付けるとのこと。そういえば、そうだ。うっかりしていました。
足を広げて立っていた区長さんが、着付けをしていた後見さんに「足閉じてください!」と怒られるなど、楽しい解説でした。笑


『膏薬煉』はもう、相変わらずの愛すべきお馬鹿さんたちがかわいくてかわいくて。
手元に台本がないので不確かかもしれませんが、双方、自分の薬に入っているものを説明するシーンには、笑ってしまいました。だって、「蚊の目脂」「地を歩く鯛」「赤子の頬の毛」「雷のまつげ」って…!(ちょっと検索してみたのだけれど上がってこないので、聞き間違いもあるかもしれません。ごめんなさい→いろいろなバージョンがあるようです
都の膏薬煉と鎌倉の膏薬煉が吸い比べをするシーンの動き、分かっているのに何とも滑稽で、あーあ、面白かった。
しかも負けたはずの鎌倉の膏薬煉、「三番勝負だかんな!」(みちくさ的口語訳)って、汚い…!笑
ああもう、こういう人って絶対いる、っていうか私自身かも、というのが、狂言の面白さだよなあといつも思う。
誰も傷つかず、ほんわかした気持ちになれるから、とても好きです。


『船弁慶』は勉強のかいあって、どうにかこうにかストーリーを理解しつつ、楽しめました。
やっぱり謡が入るので狂言ほど正確に言葉が聞き取れないし、聞き取れたとしても難しい言葉ばかりなのだけど(「序詞」だの「縁語」だの「掛詞」だのの知識なんて、あっという間に吹っ飛んだ)、どこかで読んだように「和製ミュージカル」というのは、本当だなあと。(もちろん、能の方が先ですけれど)
船が荒波に飲まれればお囃子だって盛り上がるし、動きだって大きくなる。ああ何だ、ミュージカルじゃないかと、ミュージカルなら見慣れている私は思いました。そう思えば、リラックスできる。言葉がどんどん過ぎてゆくのなんてミュージカルなら当たり前だし。(…私だけ?)
雰囲気だけを感じるものとは思わないけれど、そこからだって十分に、いろんなものは汲み取れるのだよなあと。
でもだからこそ、ちょっと引いた目で見ると、(もちろんそれが形なのだということは承知していても)面白くなってしまう。「いやいや弁慶、船頭さんが『波が荒いぞ』って言ってるんだから、そこで立ち上がって一言二言言うのはやめとこうよ」って。笑
それも、ミュージカルと考えてしまえば別に不思議ではないのですけど。


帰り道のお客さんの反応が、とても面白かったです。
何となく雰囲気を見ていて、けっこう多くの人が、狂言や能にあまり親しんでいない人みたい。
奥さんに連れられてきている旦那さんとか、ご招待で来た人とか、もしかするとあの辺りに住んでいらっしゃる方も多かったのかな。
「寝たらお金がもったいないから寝なかった」とか、「やっぱり能は雰囲気を楽しむものなんだな。全然分からなかった」とか、聞こえてくるのはそんな声ばかり。
なるほど、確かに寝ている人も多かったし(周りに迷惑をかけなければいっこうに構わないのだけど)、そもそも劇空間に馴れていないような人もたくさんいた。
私は、今日も出ていらした茂山宗彦さんが好きで最近見始めて、茂山千五郎家の人たちをみんな好きになって、でもその原点にはやっぱり舞台がとても好きだということがあって…
別にそれが善で他の人が悪だなんて思わないけれど、うーん、やっぱり、ある決まった狂言や能への印象というのはあるんだなあ、そして今日でそれは覆せなかったんだなあ、と思いました。
さすがに、後ろの席に座っていたおばさま2人組が、能が始まった途端に「幽玄の世界ね〜」と囁き合っていたのには苦笑してしまったもの。
うーん、ちょっと悔しいかな。


今回の企画、神奈川県にある新百合ヶ丘という、いわゆるニュータウンの中で行われました。
新百合ヶ丘は「しんゆり・芸術のまち」として町おこしをしているようです。
今日も、「しんゆり薪能」と書かれたはっぴを着た(おそらくボランティアであろう)人たちが駅前に立っていたり、ホール内で誘導をしてくださったりしました。


そんな中で私が感じたことは、やっぱり劇場のスタッフというのはかなり訓練されているのだな、ということ。
当たり前のことですが、劇場での人の動線がきちんと把握できていますし、劇場に来た人のニーズも理解しています。
偶然かもしれませんが、今日はそのニーズにあまり応えてもらえず、残念な気持ちもありました。
例えば、開場前に並ぶ列。スタッフはたくさんいるのだから、最後尾はこちらですと大きな声で案内してくれるか、札を持ったスタッフが立っていればよかったものを、聞かなければ最後尾を教えてくれない。
並ぶ列も、うねうねさせてしまって入場が面倒。順番は崩さず、朝礼みたいに並ばせてしまえば列ごとに、もっと簡単に誘導できたはず。
さらに、場内放送で「携帯電話は電源を切るか、マナーモードにしてください」と言われたときにはどうしようかと思いました。電源は、切ることにしようよ。
本当にちょっとしたことなのですけど、ああ、これがこうなればなあ、と思うことが多かったです。
スタッフの中に、劇場によく通う人はいなかったのかな…


まちとしてはすごく盛り上がっていても、その根っこのところで悲しい気分になってしまうと、何だかなあ、と思います。
町おこしの取り組みそのものが、ごく最近始まったものですから、仕方のない面もあるのかもしれません。
おそらく今年初めて市民館ホールで公演が行われたのでしょうし(去年は外で行われたはずです)、突然の変更で大変だったこともあったでしょう。(まあ、携帯電話は関係ないけど)
来年はどうなるのか、新百合ヶ丘というまちはどうなっていくのか、気になるところです。
お客さんの意識がどう変わっていくのかも。


ではまた明日。


michitori◎hotmail.co.jp(◎→@)

投稿者:torico : 2008年09月04日 23:16

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