リアルな美大の日常を
Search
介護等体験1.5日目
最初に感想を述べてしまうなら、「わりとうまくいった」。今までに比べて、格段に作業も進んだし、私もあの施設にちょっとなじめた気がする。
そのきっかけを、入所者さんにいただいた。
施設内のひと部屋で、壁を装飾するためのいろいろを作っている途中のこと。入所者さんたちがお食事をしたりテレビを見たりするホールの棚にしまってある、色鉛筆を持ってくるのを忘れたことに気づいた、私と班員。
部屋を出て、色鉛筆を取って、さあ部屋に戻って制作を続けよう、と歩いていた時、ある入所者さんから話しかけられました。きっかけは忘れてしまったのですが、何をやっているの?美大の子たち?というようなお話だったように思います。
なんとなく立ち話をする格好になり、30分以上話しこんでしまいました。
その方は私の住んでいるところの近くに以前住んでいらしたようで、なつかしそうに「あそこのデパートはどうなってる?」「あの駅はどうなってるの?」と質問ぜめ。
私の毎日利用する駅、今度バーゲンに行くデパート、この間用事ついでにのぞいたお店が、彼女にはどうやったって手の届かないところにあるのだと思うと、苦しい気持ちになりました。
ご自分のお嬢さんや、お孫さんのお話も聞かせていただいて、そうか、これが、これまでここに実習に来た人たちの感じていた気持ちなのか、と思いました。
施設でのオリエンテーションに行ったとき、介護長さんのお話の中に、「尊厳を大切にしてください」というフレーズが、何回も何回も出てきました。
私は、オリエンテーションのレポートの感想に、「尊厳とは何なのか。それを考えながら実習をやっていきたい」と書き、担当の先生も、「これは考え続けなければならないこと」とおっしゃいました。
今日初めて、長い時間、入所者さんとお話しして、「尊厳を大切にする具体的な行動の答え」はないのだなと思いました。少しまわりくどい言い方になってしまいますが。
例えば、こうすれば入所者さんを尊重していることになる、という正解はなくて(不正解は必ずあるのだろうけれど)、ひとつひとつのことを細やかにやっていくこと、それに尽きるのではないかと。
私は、私自身の存在が、入所者さんに不安感を抱かせているのではないかと思っていました。入れ替わり立ち替わり、様々な大学の実習生が施設に現れて、深く知ることなくまたどこかへ去ってしまう。そういった不安定さを、施設内に持ち込んでいるのだとしたら、そんなに申し訳ないことはないな、と思っていたのです。
けれど実際に施設に行ってみれば、多くの人が私たちに関心を示してくださいます。何をやるかもだいたい知っていらっしゃるので、今度は何を飾りつけてくれるの?と聞いてきてくださいます。
そして今日のように、ちょっとした自分史を聞かせてくださる方もいらっしゃいます。それは、私たちだからきっと、ふとしたきっかけで話してくださるのではないかと思います。
確かに、ひとつひとつのことを細やかにやっていくこと、それは大事なことです。けれど施設を客観的に見ていたこれまでの間、決して施設は「細やか」でいられる状態ではありませんでした。ニュースで見ていた「介護士の不足」、これは決して、ニュースの中だけの問題ではなかったのだと見せつけられました。
だからこそ、私たちが勉強に行くことは、重要なのではないかと思いました。縮こまっていないで、私たちが少しでも「細やか」の部分を担うこと(もちろんすべての「細やか」をやり遂げることはできませんが)。それができればいいなあ、そうしよう。と思いました。
今日、お話しした方に、「学校を出たらどうするの?」と聞かれて、「私は先生になります」と言いました。そうしたらその方は、「安定がいちばんよ」とおっしゃいました。「家から近い学校に勤めて、おうちでごはんを食べること。いただいたお金は全部貯金すること」。
「でも」、とその方は続けました。「あなたは中学校の先生に向いてそう。友だちみたいな先生になれるわね。今はそういう先生の方がきっといいのよ」。
ちなみに彼女は私の、染めていない髪やお化粧をしていない顔が、いたくお気に入りのようでした。笑
「先生は地味なのがいちばん」とも。
そういえば、初めて年上の人に、私の(今の時点での、ほぼ確定的な)夢を話したのかもしれない。
ではまた明日。