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「スカイ・クロラ」感想その3 破壊される男の快感
押井守監督作品「スカイ・クロラ」の感想。
思いついた順に書いてます。ネタバレあり。
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この映画のおもしろいところは、男に快感を与えないというところだ。
それは男性キャラクターの快感という意味でもあるし、男性の観客にとっての快感という意味でもある。
まず、映画版の「スカイ・クロラ」では、主人公たちは戦闘を楽しんでいないように見える。
森博嗣の原作小説では「空を飛ぶこと」「戦闘機で殺しあうこと」が彼らにとって快感である、というふうに描かれているが、押井守の演出はそれを抑制する。
劇中で主人公は
「敵機を撃ち落したとき、どんな気分ですか?」
とたずねられ、
「勝った!と思います」
と答えているが、その顔は無表情で、淡々としている。
観光客のカメラに笑顔で応じているときも、泣いているようにひきつった顔をしている。
戦闘機の飛行シーンは非常に美しいが、自由自在に空を飛ぶ快感よりも、撃ち落とされるかもしれないという恐怖感のほうがまさっているように思えた。
ほかにも、押井守はさまざまな手段を使って男の陶酔を邪魔してくる。
ヒロインの声にプロの声優を使わず、菊地凛子というクセのある役者に演じさせる。
ヒロインが涙を見せる感動的な場面で、わざと泣き顔を老婆のようにゆがませる。
こうした違和感のある演出に出会うたび、観客はハッと夢からさめたようになる。
「女に幻想持ってんじゃねーぞ!」という意地悪なメッセージが込められているように思った。
綺麗なヒロインだと思ったのに違和感ありすぎでがっかり、という感想を持った人は、押井守のこの策略にまんまとひっかかってしまったのだろう。
きわめつけは、主人公の優一が「I kill my father」(ティーチャを撃墜する)と言って敵機に向かっていき、逆にあっさり撃ち落されるラストシーンだ。
ここで男の快感は徹底的に破壊される。
主人公=男 は、最後まで気持ちよくなれないし、父親を越えることもできないのだ。
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まとめ:
「スカイ・クロラ」を見て楽しめる男は、とんでもないマゾ野郎です。