リアルな美大の日常を
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エミール・ゾラ『制作』を読む(その5)
第3章
●皆は、彼の黒ずくめの服装に目を見張った。黒のフロックに黒ズボン、ネクタイをつけ、ちゃんとした靴をはき、きちんとした正装で、いかにも町に食事に出かけるブルジョアの姿だった。
――なにかというと「ブルジョアめ!」「ブルジョア野郎!」と罵倒されるところのブルジョアです。
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●ついで、皆は、画商たちを呪った。というのは、腹立たしいことに、世間の美術愛好家たちは画家を信用しておらず、少しでも安くしてもらおうと、仲介の画商を通して買うのを望んでいたからである。
――この時代から画商、ギャラリストが美術作品の流通を仕切るようになっていきます。
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第5章
●五月十五日…(中略)…その日は彼にとりだいじな日だった。この年に創設されたサロン落選展の開会日で、サロンの審査員からはねつけられた彼の作品が、そこに展示されることになっていた。
――実際の歴史では1963年に開催された「サロン落選展」。
マネの『草上の昼食』がスキャンダルを巻き起こしたことで有名です。
きっとゾラもセザンヌも、連れ立ってマネの絵を見たに違いありません。
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●「『外光』というタイトルをやつらはおもしろがっていた。」
クロードはつづけた。「それもよかろう!かってにおもしろがらせておけばいい。外光、外光派だとね!」
――クロードの絵『外光』を見た大衆は大笑い、笑っていない者は怒り狂うというありさまでした。
「外光」を「印象」に置き換えれば、まさに印象派誕生のエピソードを彷彿とさせます。
さて、クロードはこの後、絵のモデルをつとめた女性と結ばれるのですが、童貞を喪失した瞬間たちまち堕落し始めます。二人はパリを離れ、田舎で数年を過ごします。
しかしいろいろあってまたパリに戻ってくることになりました。
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第7章
●食卓での話題は、目下、パリ全市を激変させている大工事のことだった。そして彼らは、投資金をたんまり持っているブルジョア気取りで、土地の値段をあれこれと論じた。
――大工事というのは、セーヌ県知事ジョルジュ・オスマンの都市改造計画のことを言っているのだと思われます。
この時期に今のようなパリの街並みが作られたのだとか。
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●「うわさによると……」ジョリーが小さい声で言った。
「ファジュロールはノーデとすごく有利な契約をしたらしいぜ」
このノーデという人物は、ここ数年来、画商界に一大変革を巻き起こしている商人だった。
一種独得な商才の持主で、ひと儲けできる芸術家を見抜く才知にすこぶるたけていた。たとえ似非(えせ)芸術家であろうと、絵画市場で俗受けのしそうな見栄えのいい画家でありさえすればよかったのである。そういうわけで、彼は、昔かたぎの鑑識眼のある美術愛好家を相手にせず、芸術も解しないのにただ虚栄心から絵を買ったり、また、株を買うのと同じように値上がりを見込んで絵を買うような金持ち連中だけを取引の相手にしては、絵画市場を荒らし廻っていたのである。
こうして、値上がりはとどまるところを知らず、画壇はいまや、いかがわしい取引場と化したかの観を呈している。このモンマルトルの丘一帯たるや、金鉱さながら、金融業者が押し寄せ、札束が乱れとんでいるというしまつだ!
――美術界が一種のバブル状態になっていたようです。ノーデの話は後の方でまた出てきます。